初心者が勝てるようになるまでの最短距離  まず覚えるべきは暴力的に強力な戦法

 突然だが、皆さんは週間ファミ通で連載されている、

-女流棋士香川愛生香車のうら- というコラムをご存知だろうか。

 将棋の美人女流棋士であり、ゲーム好きとして知られる香川愛生さんが様々なゲームをプレイした経験や感想などを、将棋と絡めて書き綴っていくコラムだ。

 

 先日、筆者がとある用事の暇つぶしに電子媒体のファミ通(2019年5月23日号)を読んで居た所、このコラムと出会い、そこで語られた内容に、とても大きな共感を得たので、この記事を書き始めた次第だ。

 

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ファミ通 2019年5月23日号

 その回では、香川さんがマジック・ザ・ギャザリングというカードゲームを初めてプレイしたということについて書かれていた。そこで香川さんはこのように綴っていた。

 

 「自分の性格的には、コントロールデッキという時間をかけて手の内を読みあうデッキが好きな傾向にあるが、早く上達するには、アグロのような相手の準備が整う前に勝負を決める速攻デッキが向いているのではないか。」

 「一つ目の理由は、決着までの時間が短いので連戦しやすく経験値が溜めやすいこと」

 「二つ目は、単純なデッキが多く、扱いやすいこと」

 「そして三つ目は、扱いやすい故に、ルールの全てを理解せずともプレイできること」

 「将棋でも初心者には中飛車棒銀といった、時には暴力的とも思える戦い方から着手してもらい、最速勝利のスピード感を味わい、”全ての駒を活用する”という高難度のステップを後ろ倒しにする。

 

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 初心者が新しいゲームを遊ぶ上でまず課題となること、それは「ルールを理解すること」だ。デジタルゲームならば、「システムを理解すること」とも言い換えられる。

 例えば格闘ゲームなら、どうすれば相手にダメージを与えられるのか。各種ゲージにはどういった意味や使い道があって、攻撃及び防御システムには何があるのか…。そのあとにはコンボの習得なども待っている。まずこれらを覚えることからして難しい。ただ覚えるだけなら時間をかければなんとかなるが、時間をかけるには続けて貰わなければならないし、続けるには楽しんで貰わなければならない。「ゲームの楽しさを感じながら覚える」となれば、本人だけでなく教える側にとっても難しい。

 

 敷居が高いと言われ、一時期は新規が減り衰退したと言われてきた格闘ゲームの先駆者たちは、この問題に大いに悩んできたはずだ。新規のプレイヤーに対して、どうすれば楽しんで貰える?どうすれば続けて貰える?そのヒントが、香川さんが綴ったコラムにあったと、筆者は強く感じた。

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一時期は衰退したと言われた格闘ゲームだが、近年はいわゆるEスポーツの花形として盛り上がりを見せている。

 

 格闘ゲーム(及び多くの対戦ゲーム)には楽しんだり奥深さを出すためのシステムが多数存在するが、そのすべてを理解する必要はない。まずは勝とう。細かいことを覚えるのはそれからだ。超基本的なルールを覚えた初心者が次に覚えるべきことは、暴力的に強力な戦法と、それを使った勝ち方なのだ。そのあとで、細かいシステムやキャラの違いに着手しよう。

 

 ここに、好評発売中のブレイブルークロスタッグバトル(通称BBTAG)という格闘ゲームを例に説明してみよう。

 BBTAGは、二人のキャラを選んで戦う、2vs2のタッグバトルだ。表に出て戦うキャラは一人ずつだが、もう一人のキャラとはいつでも交代したり、好きな時に呼び出して援護攻撃を行わせることができる。そして相手が操作する2キャラの体力を0にしたプレイヤーの勝ちだ。

 超基本となるルールはこんなところだ。では本題の、暴力的に強力な戦法のうちの一つを紹介しよう。

 それは、ルビー&ジンのタッグによる、「バズソーブラスト+氷翔撃アシスト」だ。

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 おそらく、ある程度格闘ゲームを嗜む人の中には、一目見ただけでこの連携の異常な強さに気づく人もいるだろう。実際、筆者が他格闘ゲームの上級者にこの連携を真っ先に教えた所、「これはヤバい!」と笑っていた。筆者自身も、発売初期にこの連携に気付き、これを使ってランキングのポイントを荒稼ぎしたものだ(笑)。

 ルビーのバズソーブラスト(上空から回転しながら襲い掛かる技)はとても攻撃範囲が広く、相手を巻き込みやすいのが強みだ。ただし、ヒットしなかった場合は隙がある。そして、ジンの氷翔撃アシスト(大きな氷の飛び道具を射出する技)は、相手を長時間固めることが出来るのが強みだが、発生が遅いのが弱みだ。

 上記の連携は、範囲の広いバズソーブラストで相手を巻き込みつつ、隙をジンの氷翔撃でフォロー、氷翔撃が相手を固めている間にルビーで走り寄って攻めを展開する、というものだ。要するに、離れた位置から強制的に相手を固めて攻めを展開する、暴力的とも言える強さを持つ戦法だ。BBTAGを新たに始める初心者にはまず、この動きをひたすら相手に押し付けて勝ち方を覚えることを、筆者はお勧めする。もちろん、対処法はあるが、それを覚えるのはずっと後のことでいい。

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美鶴&ユズリハの、クー・ドロア+咲アシストも、非常に強力な連携だ。

 

 BBTAGに限らず、多くの対戦ゲームには、こういった「相手の動きに関係なく押し付けることで勝利する」戦法が存在するはずだ。当然、上級者からすれば、それだけじゃなくちゃんと相手の動きを見たほうが楽しい、読み合いを重視すべきだ、まずはシステムを覚えろ、という意見もあるだろう。しかしそれは非常に難易度が高いことだ。まずは暴力的なほどに強力な戦法を覚え、勝利の味を知るのがいいだろう。

 上記のコラムでは、香川さんは最後にこう綴っている。

 

「まずは身の丈に合った進めかたをしてみようと考えています。早く経験を積み重ねて、いまは見えていない世界が見えるようになりたいものです。」

 

 プレイヤーが存在し続ける限り、対戦ゲームの底は無限に奥深くなっていく。最初はただ簡単で底が浅いゲームに思えても、やり続ければ最初とは違った世界が見えてくるというものだ。

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ブレイブルーシリーズに登場するアズラエル。「これが暴力だ」が口癖。

 

 ちなみに筆者はこのコラムに感銘を受けたので、dマガジンというドコモのプランを申し込んでファミ通電子書籍で購読することに決めた。次の香川さんのコラムを読むのが今からもう楽しみだ。この記事を読んで興味を持った人がいれば、そのコラムを是非読んでみてほしいし、もしよかったら、BBTAGや格闘ゲームにも興味を持って、遊んでみてほしい。

 その際は、筆者がおすすめした戦法を試してみたら、早いうちに勝利の味を知れて楽しめるかもしれないぞ。